吉野弘さん 『奈々子に』
唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは
はっきり
知ってしまったから
お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ
この詩は、娘を妊娠中に新聞で目にしました。
運命的な出会いだと思いました。
私は、人からの期待に押しつぶされ、心と体がボロボロになってしまったことがあったから。
生まれてくる子には、決してそんな思いはさせたくないと思っていたからです。
「自分を愛する心」とはどうやったら身につくのか。ずっと考えてきました。
「自分を愛する子に育て!」と娘に言うのもおかしな話です。
行きついた答えは、まず母親である私が「自分を愛する」ということ。
私が自分を大切にして、健康で笑って楽しく過ごしていれば、その背中をきっと見てくれるでしょう。
私も人生に多くは望んでいません。愛する家族と食事をして、ゆっくり休める環境を整える。そして、大好きな自然の中を散歩したり、読書をしたり、文章を書ければ、それで十分なのです。
子育てに行き詰まったら、この詩を思い出します。ああ、そういえば、自分を愛せていなかったなと振り返るのです。
『奈々子に』はこちらの詩集に掲載されています。
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