Morning letter

朝のひとときに、心穏やかな1日が送れるような、エッセンスをお届けします。

『花束みたいな恋をした』感想 ネタバレあり

『花束みたいな恋をした』

主演:菅田将暉、有村架純、脚本:坂元裕二、監督:土井裕泰

 

本作は、尊敬する精神科医樺沢紫苑先生が樺沢ラジオでおススメしていたので、とても気になり劇場に足を運びました。

ネタバレありなので、結末を知りたくない方は、この記事を読むのをお控えください。

この作品は大学生の時に出会い恋人同士になった2人が、社会に出て「生きていく」「一緒に生活していく」困難さに向き合っていく様子が描かれています今回は「共通点」「別れと結婚」に焦点を当て私の考えを述べていきます。

 

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20歳のときに偶然出会った麦(菅田将暉)と絹(有村架純)。好きな本、映画、バンド、履いているシューズまで一緒。好きなものや共通点が多く、強く共感し話題が弾み、一気に盛り上がります。それは人といて、もっとも楽しく幸せな時間です。自分の好きなものを相手も好きだと知る時は親近感がわき、少し話しただけでも距離がグッと縮まります。なんとなくつまらない毎日を送っていた2人にとって、蕾だった花が一気に開花されたような瞬間でした。

好きなものでつながった2人がなぜ楽しいと感じるか。ひとつは共感しやすいこと、そしてもう一つは、相手の人格そのものと真っ向から向き合わなくていいということです。共通の関心事である「もの」を挟んで話している状態は、対象を間にして相手と自分との「三角形の関係」になっています。二人の関心のベクトルが「もの」に向かっているので、互いの人格と直接ぶつかることがなく、穏やかで幸せな距離感を保ちやすいのです。まもなく付き合い始めた二人は同棲。好きな作家のことで盛り上がったり、一冊の本を二人一緒に読み合い涙を流したり、老夫婦の営むパン屋さんに寄って焼きそばパンを食べ合い「おいしい」を分ち合っていました。

 

しかし、大学を卒業した2人はしばらくフリーターとして暮らしていたが、生活のためお互い就職することにします。麦は17時に退社できるという会社に勤めましたが、蓋を開けてみると20時の帰宅であったり、仕事を家に持ち帰り、休日出勤もあるという現実が待っていました。それでも麦は、自分が一生懸命仕事に打ち込むことで絹を幸せにしてあげられていると思い、頑張り続けます。絹とのつながりよりも仕事を優先していきます。そして、かつてお互いが好きであった小説や映画に興味を持てなくなっていくのです。大好きなパン屋さんが閉店してしまい絹はとても残念に思いますが、麦は「違うパン屋さんに通えばいいじゃん」の一言。二人の心には溝が生まれていました。

 

麦の心の変化は社会人として、大人としての成長の一途にすぎないのかもしれませんし、好きなものが変わっていくのは仕方ないことです。しかし、麦は大切なことをおざなりにしていたことが問題なのです。それは絹への思いやりです。

仕事に打ち込んでお金を稼げば相手は満足するであろうという麦に対し、絹は苦しめられていきます。彼は話しかけても生返事、約束したイベントも忘れてしまう、上から目線で優しさを感じない、仕事しか頭にない…絹の心は虚無感、孤独、喪失感でいっぱいとなっていきます。

好きなものという共通点のなくなってしまった二人は、人格と人格で向き合うようになり、ぶつかること、我慢できないと思うことがいろいろ出てきます。それは当たり前の事なのです。しかし、思いやりを持てれば、どちらかの趣味に耳を傾けたり、お互いに新しい趣味を見つけられます。それが、二人にはできませんでした。

 

お互いに別れを決意しますが、話の途中で麦は「別れたくない」と口にします。「愛情がなくなっても、結婚し子どもをつくり、上手くいっているカップルはたくさんいる。今は上手くいっていなくても、結婚したらきっと上手くいく。だから結婚しよう」と言います。「愛情がない」この言葉に絹は耐えられなかったのでしょう。今愛情がないのに、これから愛情が生まれるわけない、そんな生活、自分にはできるはずがないと。そうして5年の月日のピリオドを打つのです。

 

私は本作品を見て、まるで自分の結婚生活そのものだと感じました。極端にいってしまえば、結婚とは恋愛でいう倦怠期がずっと続くようなものではないでしょうか。私は夫と付き合って10年、結婚して6年です。出会ったとき、はやり共通の話題で盛り上がりすぐに付き合い始めました。週末は一緒に過ごし、行きつけのお店に出向いて毎週お酒を飲んだり、旅行にも行き、一緒にいるだけで楽しい時間を過ごすことができました。しかし、結婚し月日が流れると楽しいことだけではありません。私が仕事をセーブするようになれば、これまでのように毎週飲みにいったり、旅行に行くというお金の使い方をしていたら家計は破綻します。私は家計を守らなければいけないし、夫はなんで結婚したら急にそうなるんだ、自由に使いたいという思いがあり、上手くいかない時期もありました。そして、麦のように私も、趣味や付き合う人たちも変わっていきました。これまで夫と一緒にしてきたことが楽しいと思えなくなっていたのです。年齢とともに仕事の責任が重くなり、ため息や生返事の増える夫に対し悲しみを感じることもありました。ですから、私は麦の気持ちも、絹の気持ちも両方わかります。

 

付き合い当初の「好きで好きで仕方ない。ただ一緒にいられるだけで幸せ」という気持ちってほとんどの人が持続することは困難だと思うし、実際そういう人って少なくても私の周りにはいません。倦怠期もあって、相手の嫌なところも見えてきたり、愛情を前のように感じなくなっても、そろそろ年貢の納め時と感じたり、子どもがほしいからという理由で結婚する人が多いのではないのでしょうか。現に私はその中の一人です。しかし、そんな生活耐えられないと別れを選ぶ人もいます。もちろん、どちらを選んでも間違えではありません(酒に飲まれ暴力をふるう、ギャンブラーで借金癖がある、女癖が悪い、そんな男とは結婚しない方がいいと思いますが)。長年付き合うカップルにとって、結婚と別れは紙一重なのだと私は強く思いました。

 

だたし、結婚を選んだ場合に決して失ってはいけないものは「思いやり」です。私も「あーこんな結婚生活もういやになる」「一人で生きていった方がよっぽど楽なのでは?」と考えたことは幾度となくあります。そんなときいつも思い出す言葉があります。「別れるか、なんとかするか」縁があって夫婦となり、家族となったパートナーですから、とりあえずなんとかやってみるかと思い直します。我が家は決して仲は悪くありません。むしろいいほうだと思います。それにはやはり努力が必要だということです。それなりにいい夫婦でいることは容易いことではありませんが、結婚しなければ得られない幸せもたくさんあるのだということも決して忘れてはいけません。

 

付き合い始めのから幸せの絶頂期、そして倦怠期。それが非常にリアルに描かれています。どこにでもある普通の恋愛であり、お互いが離れ離れになってしまうことや、どちらかが病気になってしまうという出来事は起こりません。しかし、どんなに恋愛においても、ともに過ごした年月はかけがえのない思い出となるのです。別れるにしても、結婚を選ぶにしても、これまで歩んできた道、その誰かを愛した日々は尊く、素晴らしいことであったということを教えてくれる映画になっています。

 

 

花束みたいな恋をした 通常版 [DVD]

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  • 発売日: 2021/07/14
  • メディア: DVD