平成元年に生まれた漣と葵の二つの物語。
13歳で出会った二人は恋をするが葵が突然姿を消してしまう。
葵が養父に虐待を受けてることを知った漣は葵を救いだそう必死で探し逃避行する。
しかし幼い彼らはすぐに警察に見つかり引き裂かれる。
その後再開を果たすも別々の人生を歩み続けると誓う。
それから長い時を経てそれぞれ傷を負った二人がめぐり逢いを果たすまでを中島みゆきの「糸」にのせて織りなすストーリー。
漣と葵二人の間にはたくさんのめぐり逢いと別れがあった。
漣の家族、妻の香織の言葉がキーワードとなっている。
死が近づく香がやせ細った体で漣を抱きしめながら微笑む。
「運命の糸ってあると思う。その糸はもつれて切れてしまうことがあるけど、またつながっていく」
香には10年付き合った彼氏がいたが、今はこうして漣とつながったという運命を比喩したが、漣に宛てた最後のメッセージであった。
「私との糸は切れてしまうけど、また出会うであろう人と次の人生をつないでほしい」「別れの涙なんてみせないで」
それから時が経ち漣が葵と再会できる最後のチャンスが訪れるが、飛び出そうとした自分にブレーキをかける漣。
その時娘の結が漣の背中を押す。
どんぐりをぶつけて「行けよ」と。
結の笑って送りだすその笑顔は香に強くリンクする。
「私のことは心配しなくていいから会いに行って」と香が言ったようだった。
会いたい人の間には愛する「香」と「結」がいる。
長い糸で漣と葵は結ばれていたが、その織りなす布の中には香と結がふたりを温めている。